
治療例 CASES
犬の肺腺癌
2026年7月8日(水)
【概要】
肺癌は人では発生率が高い疾患ですが、犬猫では稀な疾患です。
犬では、原発性肺腫瘍の多くは10歳以上の高齢で発生し、6-8割が肺腺癌で、他には組織球性肉腫や扁平上皮癌などが発生します。肺腺癌はリンパ節や肺内転移を起こすことがあります。
【症状】
初期では無症状なことが多く、健康診断や他の病気でレントゲンを撮ったときに見つかるケースも多いですが、病気が進行すると咳や頻呼吸、元気低下などの症状が見られるようになります。また、腫瘍随伴症候群として肥大性骨症を伴うと、四肢の痛みや跛行を認めることがあります。
【診断】
画像診断(胸部レントゲン検査やCT検査、超音波検査)、病理検査
【治療】
孤立性の肺腫瘍では外科的切除が第一選択で、一般的には腫瘍が存在する肺葉ごと切除します。転移や併発疾患などで手術ができない場合は症状の緩和を目的とした緩和治療を行います。
【予後】
腫瘍の大きさ、グレード、リンパ節転移、腫瘍の位置などにより変わりますが、生存期間中央値399日という報告があります。腫瘍の大きさが重要な予後因子と考えられています。
【症例紹介】
症例はシーズー、11歳、避妊メスのワンちゃんです。3か月前から咳をするようになり、前医でのレントゲン検査で肺腫瘍と診断され、精査と治療のために当院に来院されました。
当院でのレントゲン検査、CT検査、細胞診検査にて、右肺後葉に直径約5cmの腫瘤が確認され、肺腺癌が疑われました。オーナー様も手術を希望されたため、肋間開胸術にて腫瘤を摘出し、病理検査にて肺腺癌と確定診断されました。手術後は定期的に検診を行っていましたが、術後4か月でCT検査にて肺内転移が疑われたため、内服での抗がん剤を開始し、現在も投薬治療中です。
【まとめ】
肺腫瘍の早期発見には定期的な健康診断やペットドッグが有用です。また、当院ではCT検査が行えますので、レントゲンでは見つからない小さなしこりを見つけることができます。咳や呼吸が荒い、健康診断で「肺にしこりがある」と指摘された、など気になる症状があれば、早めにご相談ください。
獣医師 大平由子





