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治療例

治療例 CASES

SFTS(重症熱性血小板減少症候群)

2025年11月3日(月)

【概要/症状】

SFTSはマダニによって媒介されるウイルス性感染症で、ニュースでも取り上げられています。6日~2週間程度の潜伏期間のあと、

・突然の発熱

・消化器症状(嘔吐・下痢など)

・血小板(血を止める働き)減少による出血症状

・白血球減少

などの症状が発生し、重症化すると死亡することもあります。

 

布団や衣類に発生する、家庭内で生息するダニとマダニでは種類が異なります。3mm程度だったマダニは、寄生すると口をしっかりと突き刺し長時間吸血します。吸血後は大人のマダニでは10mmほどに大きくなります。

またマダニはSFTS以外にも様々な感染症を媒介します。詳しい情報はここでは省略致しますが、マダニは草の先で動物や人が通るのを待ち構えています。マダニは犬や猫、人に限らず狐や狸、鹿、鳥などの野生動物にも寄生します。

 

【危険性】

この感染症の恐ろしいところは、マダニに刺されるだけでなく、発症あるいはウイルスを持った猫や犬、野生動物、人の血液や唾液・排泄物に触っても感染する可能性があることです。

 

2011年に国内で報告されてから、2021年以降は毎年100名を超える患者が報告されており、2025年5月にはSFTSを発症した猫の治療にあたっていた獣医師が死亡するニュースがありました。岐阜県内でも、以前からSFTSウイルスを持ったマダニがいることは報告されていましたが、2025年7月、ついに人での発症が報告されました。九州地方の暖かい地域から、徐々に北上してきている現状です。

 

 

【治療】

有効なワクチン、抗ウイルス薬は実用化されていません。対症療法(現われた症状を和らげる、一時的に症状を軽くするための治療)として抗ウイルス薬を使用することがあります。根本的な原因の治療ではありません。

 

 

【予防】

最大の予防はマダニに刺されないことです。そのためにも、大切な愛犬愛猫にはまず病院で処方される予防薬を使用しましょう。ホームセンターやペットショップなどの市販品での予防は確実ではありません。

また、人には予防薬がないので対策が必要です。

 

・草むらには行かない、行く場合はマダニを目視で確認しやすい明るい色の長袖長ズボン、手袋で肌の露出を少なくする

・虫除け剤を使用する

・屋外活動後はマダニに刺されていないか確認する

・野良猫や野生動物、予防歴が不明な動物に触らない

 

また、SFTSウイルスは一般的な消毒剤や台所洗剤、紫外線などで感染性がなくなることが分かっています。動物を触った後の手洗い、衣服の洗濯などを徹底することが重要です。

 

 

【マダニに刺された場合】

無理に引き抜くとマダニの口が皮膚内に残ったり、マダニの体液が逆流して病原体が体内に入ったりする恐れがあるので、人は皮膚科などの医療機関、動物は動物病院で処置をしてもらってください。

刺されてしまった場合は体調の変化に注意をし、発熱などの症状が現われた場合は早めに診察を受けてください。

 

 

【まとめ】

散歩に行っていなくても、外には出ない愛犬愛猫でも、マダニに刺される可能性はあります。特に多い発生時期は梅雨時〜秋ですが、マダニは年間を通して生息しているので常に注意し、時期を問わず予防をする必要があります。

 

どのような場面でリスクがあるのか、予防はしたほうがいいのかなど気になることがあればお気軽にお尋ねください。

大事な家族の命を守るためにまずは予防をしましょう。

 

 

獣医師 小川姫奈