治療例 CASES
猫の慢性歯肉口内炎(FCGS)
2023年3月1日(水)
猫の慢性歯肉口内炎(FCGS)についてご紹介します。
猫の歯肉口内炎(FCGS)とは口の中に炎症をずっと起こしてしまい、口が痛くなる病気です。
原因は不明ですが複数の要因があり、背景にウイルス感染が存在し、歯やプラークに対する過剰反応により炎症を起こしてしまうと言われています。
症状として、
・食欲や元気が低下する
・口が痛そう(ドライフードが食べられなくなる、ごはん食べると急に暴れる、鳴き出す、顔をこする)
・毛づくろいできない
・口臭がする
・よだれがでる
・体重減少
などがあります。
治療として内科治療と外科治療があります。
内科治療・・・ステロイド、抗生剤、インターフェロン(ウイルスの増殖を抑える効果がある)などがありますが、これらは完治できる治療ではなく症状を抑える目的で使用します。そのため投薬を継続しないといけないのでいずれ副作用が出たり、効果がイマイチになることがあります。
ただ、侵襲性がなく、コントロールできる子もいます。
外科治療・・・全身麻酔下で炎症の元となる歯を抜くことで、病気を根本から治療していきます。投薬の必要がなくなり、症状が緩和しますが中には歯を抜いても再発するケースもあります。
歯を抜くことでごはんが食べられなくなると心配される方もいますが基本的には、犬も猫も丸のみで人間のような咀嚼はしません。また今はウェットフードもあるので痛みがなくなれば嘘のようにごはんを食べてくれます。
ここから当院で抜歯術を行なった猫ちゃんを紹介します。
症例)
年齢:10歳
性別:メス
【経過】
1年程前から口内炎により内科治療(ステロイド、抗生剤)を実施していましたが、ステロイドの副反応や治療効果の低下により体重が減り外科手術に踏み切った猫ちゃんです。


※手術前の写真です。喉の近くの口の粘膜が赤く腫れ上がっているのと舌がぶつぶつ腫れているのが分かります。
この猫ちゃんは全臼歯抜歯という牙から奥の歯を全部抜歯する手術を実施いたしました。
手術後は1泊入院し、点滴と痛み止めを流し翌日退院しました。


術直後(写真1枚目)は痛みが続くので1週間ほど痛み止めや点滴の実施のため通院してもらいましたが、その後経過は良く術後2ヶ月後(写真2枚目)には口内炎は少し残っていますがステロイドなしでご飯を食べられ体重も増加しました。
猫の口内炎はご飯が食べたくても口が痛くて食べられない非常につらい病気ですが、外科手術にて完治する可能性もあります。しかし一部の猫ちゃんは抜歯しても投薬が必要なことがあります。
口が痛いくてご飯が食べられないなどあればお気軽にご相談ください。