治療例 CASES
猫の特発性膀胱炎(FLUTD/ Feline Lower Urinary Tract Disease)
2024年10月8日(火)
今回は、猫下部尿路疾患(FLUTD)の原因として最も多い特発性膀胱炎についてご紹介します。猫のFLUTD(Feline Lower Urinary Tract Disease)は、感染症、尿石症、神経性、腫瘍、尿道栓子、解剖学的異常、医原性、外傷などの原因により血尿、尿道閉塞、排尿困難、頻尿などの症状を引き起こす疾患の総称です。
【病態】
特発性膀胱炎はその原因がはっきりしない膀胱炎です。FLUTDの中で60%を占めます。特に10歳以下の若齢の猫での発生が多いです。明確なメカニズムは不明ですが、ストレスや肥満、ドライフードのみの食事、飲水量の低下などが発症要因になるとされています。
【症状】
特発性膀胱炎だけに特異的な症状はなく、ほかのFLUTD疾患と共通の症状がでます。排尿困難、血尿、頻尿、トイレ以外の場所での排尿、食欲不振、元気低下などです。
【診断】
特発性膀胱炎は除外診断になります。FLUTDを引き起こす他の疾患(例:尿石症、解剖学的異常、細菌感染、腫瘍など)の原因が、身体検査、尿検査、レントゲン、エコー検査で発見できなければ、特発性膀胱炎と診断します。
【治療】
特発性膀胱炎に特効薬はないため、特発性膀胱炎の発症要因を少しでも減らしてあげることが重要です。治療しなくても数日〜数週間で症状が改善することも多いですが再発する可能性も高い疾患のため、根気強く治療することが必要になります。まず治療の根幹となるのは環境の改善です。以下にいくつかの例を紹介します。
1.トイレの見直し
猫トイレの用意する数は飼育頭数+1、大きさは猫の体長の1.5倍以上が理想とされます。また、猫砂の種類は猫ちゃんによって好みが異なります。急な変更などをするとそれがストレスになることもあります。
2.療法食
猫特発性膀胱炎のための療法食がいくつか販売されています。猫のストレスに良いとされる加水分解ミルクプロテイン、トリプトファンが増量されているものです。またミネラル成分も調整されています。
3.水分摂取量増加
ドライフードのみの食事の場合、ウェットフードを与えることで水分摂取量を簡単に増やすことができます。あまり水を自分で飲まない猫ちゃんの場合には有効です。また、水飲み場の数を増やすことも効果的です。
4.鎮痛剤
膀胱炎は痛みが伴うことが多いです。そのためねこちゃんのQOL改善のために鎮痛剤を処方することもあります。
5.環境の改善
ストレスが少ない室内環境を作ってあげましょう。キャットタワー、静かな隠れ場所、遊んであげる、爪研ぎを設置するなどをしてあげるなどがあげられます。
特発性の膀胱炎は再発を繰り返すことが多い疾患ですが、上記のような治療法を
根気強く行うことで再発のリスクを減らすことが出来ます。もし、血尿、頻尿、いつもと違う場所でおしっこをするなどの症状が見られた場合は、いつでもご相談ください。
獣医師 岡田瑞生