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狂犬病ワクチンについて
2025年11月3日(月)
犬を飼っていると「狂犬病ワクチンの接種が必要」と聞くけれど、「そもそも狂犬病ってどんな病気?」「どうして毎年ワクチンを打たなきゃいけないの?」と思う方もいるかもしれません。今回の記事では、狂犬病の基礎知識とワクチン接種の重要性について、分かりやすく説明します。
【概要】
狂犬病は、致死率ほぼ100%のウイルス感染症です。感染すると脳に影響が及び、興奮状態になり、麻痺が起きてほぼ確実に死亡します。この病気の怖いところはそれだけではなく、犬だけの病気じゃない!というところです。
人にも感染するいわゆる「人獣共通感染症」 で、犬に噛まれた傷口からウイルスが体内に入り、人も発症すると助かりません。世界では年間5万人以上が狂犬病で亡くなっています。
【 ワクチンについて】
日本では1957年以降、国内で犬の狂犬病の発生は確認されていません。しかし、世界では今でも狂犬病が流行している地域が多く、日本も油断できない状況です。
・接種目的
✔ 犬を守るため → 感染を防ぎ、愛犬の命を守る。
✔ 人を守るため → 万が一、感染した犬が人を噛むと、命に関わる。
✔ 日本を守るため → 海外から狂犬病が入ってきても広がらないようにする。
・接種義務
日本では「狂犬病予防法」という法律により、犬の飼い主にはワクチン接種が義務付けられています。
✔ 生後91日以上の犬 → 毎年1回、狂犬病ワクチンを接種する。
✔ 犬の登録 → 一生に1回、自治体に登録する。(鑑札がもらえる)
※2025年3月~、岐阜市と各務ヶ原市においては新規登録あるいは市外からの転入の際にマイクロチップが鑑札とみなされるようになりました。
✔ 接種済みの証明(注射済票) → ワクチン接種後、自治体から「注射済票」をもらい、犬の首輪につける。
→ これを守らないと、法律違反になり、20万円以下の罰金が科せられることも!
・接種場所
狂犬病ワクチンは、動物病院や自治体が実施する集合注射で受けられます。春(4〜6月) に自治体から案内が届くので、その時期に打つのが一般的です。ただし、健康上の理由でワクチンを打てない犬には、接種を免除するための「猶予証明書」を発行できる場合があります。
※以下のような病気や体調不良の犬は、ワクチン接種によるリスクが高いため、獣医師の判断で「猶予証明書」を発行できます。
- 重篤な病気を持っている場合
心臓病、 腎不全・肝不全などの内臓疾患
- 免疫に関わる病気や治療を受けている場合
自己免疫疾患(免疫介在性溶血性貧血など)、抗がん剤治療中・放射線治療中
- 重いアレルギーや過去にワクチンで重篤な副作用があった犬
アナフィラキシーショックなど、ワクチン接種後に重度の発作や呼吸困難が起きたことがある
- 高齢で体力が著しく低下している場合
~注意点~
- 猶予証明は「一生免除」ではなく、1年ごとに更新が必要。
- 体調が回復したら獣医師と相談しながら接種を検討することが望ましい。
※詳しくは環境省や厚生労働省の公式サイトをご確認ください。
【まとめ】
日本では長年、狂犬病の発生はありませんが、海外から持ち込まれる可能性はゼロではありません。2006年には、海外で犬に噛まれた日本人が帰国後に狂犬病を発症し、亡くなっています。「日本は狂犬病がないから大丈夫」と思わずに、大切な家族(愛犬)のため、毎年ワクチン接種を受けましょう!ただし、上述のような健康上の理由でワクチンを打てないことがあります。
もし「うちの犬は接種して大丈夫?」などの不安や疑問点がありましたら、いつでもご相談ください。
獣医師 岡田瑞生

