治療例 CASES
オス犬の尿道結石(陰嚢尿道造瘻術)
2024年7月3日(水)
オス犬の尿道結石(陰嚢尿道造瘻術)について紹介します。
犬のオスの尿道はメスに比べて長く、先にいくにつれ細くなります。膀胱でつくられた結石は尿
道に流れていきますが、大きいものだと尿道に詰まってしまいます。
症状
・おしっこが出ない
・おしっこがでてもポタポタしか出ない
・血尿が出る
・何度も排尿の姿勢はとる
・陰部を気にして舐める
などがあります。また完全におしっこが出なくなると急性腎不全へと進行し食欲元気がなくなり、そのままにしておくと亡くなってしまうこともあります。
診断
レントゲン検査や超音波検査にて結石の有無や蓄尿の様子を確認します。また同時に血液検査にて腎臓の数値が悪くなっていないか、尿検査にて結石の種類を確認します。
尿道の結石は尿道にカテーテルを入れて、膀胱に押し戻します。その際に痛みが出ることもあるので鎮静をかけて実施することが多いです。膀胱に戻れば膀胱切開にて結石を摘出します。
しかし膀胱に戻らず尿道から動かないこともあります。その際にどう対応するかが重要になります。
今回紹介するわんちゃんは12歳のオスのわんちゃんです。過去に膀胱結石があり尿石用のフードを食べています。
おしっこが出ないと来院され、レントゲンを撮影すると、
尿道に複数の結石絵を認めました。また尿が出ないため膀胱の拡張と膀胱内に結石も認めました。
このわんちゃんは残念ながらカテーテルを用いて結石を膀胱内に押し戻すことはできませんでした。このままでは尿が出なくなってしまうので陰嚢尿道造瘻術という手術を実施しました。
この陰嚢尿道造瘻術は、尿道の出口を陰嚢に開ける手術です。尿道は先にいくにつれ細くなっていきますので尿道結石の多くは陰茎の手前、もしくは陰茎内に詰まることが多いです。このわんちゃんも陰茎に複数の石が詰まっていました。そのため陰茎の手前にある陰嚢に尿道を開口させて、陰茎を通らずに排尿させる手術になります。
合併症として膀胱炎、尿道の狭窄、10日ほどの血尿が認められることがあります。
おしっこは1日でも出ないと命も問題にあります。
また手術をして終わりではなく、術後も石ができない工夫(食事の変更)や、再度石ができていないか定期的なチェックをする必要があります。
おしっこがでにくい、またペニスをよく気になるなどの症状があればお気軽にご相談ください。
獣医師 小野和徳