治療例 CASES
犬の肛門周囲腺腫
2024年10月8日(火)
今回は犬の肛門の周囲に発生する腫瘍の中でも最も多い肛門周囲腺腫について紹介します。
【病態生理】
アンドロジェンという性ホルモンにより刺激を受けるため、去勢してない高齢の男の子に発生が多い病気です。肛門周囲腺という皮脂腺に由来する良性の腫瘍です。多発的に生じることが多いですが、増大はゆっくりです。
【症状】
肛門の周囲、尾根部にしこりができるので発見するのは比較的簡単です。しこりがあるだけならいいのですが、そのしこりが出血、化膿することもあります。お尻を気にして、なめたり地面にこすりつけたりすることもあります。また、進行してしこりが大きくなると排便障害(便がでにくい)などの症状が現れる場合もあります。
写真は3年前にしこりができ、その後出血してしまったため、当院を受診された症例です。16歳の未去勢の男の子でした。肛門周囲にしこりが多数できています。
【診断】
症状や年齢、去勢手術の有無に加え、FNA (針吸引生検)による細胞診検査、切除生検による病理組織学的検査を行い、診断します。確定診断には、病理組織学的検査が必要です。また、ほかの悪性腫瘍との鑑別の為に血液検査、超音波検査で転移の有無を調べることも有用です。
【治療】
去勢手術と外科切除を行います。外科切除と同時に去勢手術を行うことで、再発率を抑えることができます。
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※外科切除直後と手術後2週間の写真。同時に去勢手術も実施
現在は、抜糸も無事終わり、経過は良好で、排便も問題なく出来ています。
【まとめ】
犬の肛門周囲にできる腫瘍で最も多い肛門周囲腺腫は、手術によって完治出来る病気です。手術後、とても快適に過ごすことができるようになります。ただ、発症する際は高齢の場合もあり、今回の子のように16歳での手術は体に負担がかかりますので若齢期での去勢手術をお薦めします。
もし肛門周囲のしこり、便がでにくい、お尻を気にするなどありましたらいつでもご相談ください。
獣医師 岡田瑞生