治療例 CASES
ヘビの咬傷
2024年10月8日(火)
毎日暑い日が続きますね。BBQや水遊びが楽しい季節になりました。山奥だけではなく、身近に潜んでいる可能性のあるヘビの咬傷についてご紹介します。
【概要】
犬におけるヘビの咬傷はヘビ毒による中毒だけでなく、噛まれることによる外傷や細菌感染が問題になることが多い。ヘビ毒は一般的に出血や溶血、壊死を引き起こし、心毒性や神経毒性ももつ。
日本ではアオダイショウやシマヘビなど無毒なヘビが多く、毒ヘビは以下の3種類である。
マムシ | ヤマカガシ | ハブ | |
生息地域 | 日本全土 (北海道〜九州) | 北海道以外 | 沖縄本島周辺 奄美諸島 |
毒牙の位置 | 前歯2本 | 奥歯2本 | 前歯2本 |
潜伏場所 | 草むら | 水田、水辺 | 草むら |
※ヤマカガシは攻撃性が低く毒牙も短く奥にあるため、マムシによる咬傷が多いとされる。
【症状】
•咬傷部位の顕著な腫れ(1〜4箇所の牙痕が見られることが多い)
※ただし咬まれても毒液が注入されないケースやヤマカガシによる咬傷の場合は腫れを伴わないこともある
- 元気消失、食欲不振、嘔吐、発熱
- 患部からの出血、呼吸困難、低血圧、頻脈、不整脈、痙攣など
【治療】
人では抗毒素血清が主体だが、犬はヘビ毒に対して人よりも抵抗性があり、機敏な動きから注入される毒の量も少ないため、アレルギー反応の恐れもある血清療法は実施しないことが多い。
感染予防の抗菌薬や炎症を抑制するステロイド、鎮痛薬、輸液など対症療法が主体であるが、重症例では輸血や気管挿管が必要になることもある。
【症例紹介】
※咬傷後1日 ※咬傷後11日後
夜中に家の近くの草むらで排泄中にマムシに噛まれてしまった、フレンチブルドッグの4歳の女の子です。
咬傷後すぐに夜間病院を受診され、翌日に当院に来院されました。
患肢は痛々しく腫れ上がり、疼痛により呼吸は荒く脱水症状も起きていました。
剃毛すると6箇所も傷口があり、治療中に皮膚の脇腹にかけて皮膚の変色もみられましたが、通院を頑張っていただくことで右の写真のようにすっきりした足に戻りました。
元々外で排泄するワンちゃんでしたが、飼い主さんはこれ以来中で排泄させているとのことです。
【まとめ】
今年は猛暑のせいかヘビの咬傷例が増えています。大切なペットが噛まれてしまった時にどういった治療が必要かを知っていただき、また出来るだけ噛まれるような場所に行かないことが重要です。ちなみに猫の場合は症例数が少なく、症状も比較的軽いことが多いようです。
獣医師 中西彩乃